値上げするべきか迷ったら、まず数字を見る

飲食店の値上げは悩ましい判断ですが、原価や人件費が上がる中で価格を据え置けば利益は削られます。原価率、粗利、客単価、来店数などの数字を見ながら考える値上げ判断を解説します。

経営コンサルタントとして個人飲食店を支援していると、「値上げしたほうがいいのはわかっているが、踏み切れない」という相談をよく受けます。「お客さんが離れるのではないか」「常連さんに申し訳ない」「近くの店より高く見えるのではないか」——そう考えるほど、なかなか動けなくなります。

その不安は自然なものです。ただ、原価や人件費、光熱費が上がっているのに価格だけを据え置けば、利益は少しずつ削られていきます。値上げは強気な判断ではなく、店を続けるために数字で考える経営判断です。

この記事でわかること

  • 飲食店が値上げを迷いやすい理由
  • 感情だけで価格を決めると利益が削られる理由
  • 原価率・粗利・客単価・来店数を見て判断する考え方

値上げを迷うほど、利益は先に減っている

値上げを考え始めるとき、多くの店ではすでに何かしらの負担が増えています。仕入れ価格が上がった、スタッフの人件費が重くなった、光熱費が以前より高い。こうした変化が積み重なると、同じ売上でも残る利益は少なくなります。

支援の現場でよく見るのは、「まだ何とかなる」と価格を据え置いた結果、忙しさの割にお金が残らなくなる状態です。お客さんのことを大切に思うほど価格を上げにくくなりますが、店が続かなければ、その料理を提供し続けることもできません。

値上げはお客さんを遠ざけるためではなく、店を続けるための判断

原価や人件費が上がっているなら、価格を見直すことは利益を守るための自然な経営判断です。

値上げ判断の根拠は、感覚より数字に置く

値上げを考えるときは、「高いと思われそう」という不安だけで決めないことが大切です。まず、今の価格でどれだけ利益が残っているかを確認します。

見る数字確認したいこと
原価率食材費が価格に対して重くなっていないか
粗利料理ごとにどれだけ利益の余地があるか
客単価一人あたりの注文金額が変化しているか
来店数値上げ前後で客数を見る準備ができているか
人件費率売上に対して人件費が重くなっていないか

この数字を見ると、すべてのメニューを一律で上げるべきか、原価が重いメニューだけ見直すべきか、セット内容や量を調整するべきかが考えやすくなります。

値上げは価格だけでなく伝え方も大切

価格を変えるときは、数字だけでなく、お客さんへの伝わり方も大切です。何の説明もなく価格だけが上がると、不満につながることがあります。

一方で、食材の質を守るため、働く人を守るため、店を続けるための見直しだと伝われば、お客さんにも受け止めてもらいやすくなります。長く通ってくれる常連さんほど、店が無理をして続けている状態には気づくものです。

申し訳なさだけで価格を据え置かない

お客さんへの配慮は大切ですが、利益が残らない価格を続けると、料理の質や営業の安定を守りにくくなります。

まずは一品ごとの利益を見直してみよう

値上げを考える第一歩は、人気メニューや主力メニューの原価と粗利を確認することです。よく売れている料理ほど、価格設定の影響は大きくなります。

値上げが必要だとわかったら、いきなり全体を大きく変えるのではなく、原価が重いメニュー、注文数が多いメニュー、利益が残りにくいメニューから見直してみてください。価格、量、セット内容、仕入れ先など、考えられる選択肢は1つではありません。

不安だけで先延ばしにするより、数字を見て小さく判断するほうが、店にもお客さんにも誠実です。

一点、見落としやすいことがあります。価格を変えたあと、ホームページやGoogleマップに掲載されている価格・メニュー情報を更新していない店を支援の現場でよく見かけます。来店前に確認したメニューと、実際の価格が違った場合、お客さんは戸惑います。値上げをしたら、店内だけでなくオンライン上の情報も合わせて見直すことが、信頼を守るための基本です。値上げするべきか迷ったら、まず原価率と利益から考え、決断したら情報発信も含めて整える——それが個人飲食店の値上げ判断を成功に近づけます。

石崎 一之進
この記事を書いた人
石崎 一之進(中小企業診断士)

経営コンサルタントとして中小企業のAI活用、IT導入、マーケティングの支援をしています。数々の事業者を支援する中で気づいたこと、他の飲食店の方に知ってほしいことを書いています。

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