勘と経験だけでは、利益が残らない時代になっている

飲食店経営では勘と経験も大切ですが、売上だけを見ていては利益が残っているか判断できません。原価率、人件費率、客単価などの数字を加え、経営判断の精度を上げる考え方を解説します。

「今日は忙しかったから大丈夫」「今月は売上があるはず」——経営コンサルタントとして個人飲食店を支援していると、店主の肌感覚が経営判断の中心になっている場面によく出会います。長く店を続けてきた人ほど、曜日や天気、客層の変化を感覚でつかむ力があり、それ自体は確かな強みです。

ただ、原材料費、人件費、光熱費、家賃などの負担が増える中で、感覚だけでは「本当に利益が残っているか」を判断しにくくなっています。勘と経験に数字を1つ足すだけで、経営判断の精度は大きく変わります。

この記事でわかること

  • 飲食店経営で勘と経験だけに頼ると危うい理由
  • 売上だけでは利益が残っているか判断できない理由
  • 原価率・人件費率・客単価などを見る基本的な考え方

忙しい店でも利益が残るとは限らない

売上がある店ほど、経営が順調に見えます。席が埋まり、厨房も忙しく、会計の回数も多い。その状態を見ると「今日は良かった」と感じるのは自然です。

しかし、飲食店で大切なのは売上だけではありません。売上から食材費、人件費、家賃、光熱費、消耗品費などを差し引いた後に、どれだけ利益が残るかが重要です。

支援の現場でも、忙しいのに手元にお金が残らない店を見ることがあります。原因は、お客さんが少ないことではなく、売れば売るほど原価や人件費も増えていることに気づけていない場合があります。

売上は結果の入口で、利益は経営の中身

売上が増えても、原価や人件費がそれ以上に膨らめば、店に残る利益は少なくなります。

勘に数字を足すと、判断がぶれにくくなる

数字を見ることは、勘や経験を否定することではありません。むしろ、現場で感じていることが正しいかどうかを確かめる材料になります。

たとえば「最近ランチが忙しい」と感じているなら、客数、客単価、原価率を合わせて見ることで、忙しさが利益につながっているか確認できます。「夜の売上が伸びない」と感じているなら、来店数だけでなく、予約数や一組あたりの注文内容を見ることで改善点が見えてきます。

見る数字わかること
売上店全体の規模感
利益実際に残っているお金
原価率食材費が重くなっていないか
人件費率シフトや人員配置に無理がないか
客単価一人あたりの注文内容

数字は難しい会計作業ではなく、店の状態を点検するための道具です。

「なんとなく良い」をそのままにしない

店主の感覚は大切ですが、「なんとなく良い」「なんとなく悪い」のままだと、次の打ち手を決めにくくなります。

売上が上がっているのに利益が残らないなら、原価や人件費を見直す必要があります。客数が増えないのに客単価が上がっているなら、メニュー構成に強みがあるかもしれません。数字を見ると、感覚だけでは見落としていた店の特徴が見えてきます。

細かく完璧に見るより、まず毎月同じ数字を見る

最初から複雑な分析をする必要はありません。売上、原価、人件費、利益を毎月同じ形で見るだけでも、変化に気づきやすくなります。

まずは今月の数字を一枚にまとめてみよう

数字を見始める第一歩は、難しい管理表を作ることではありません。今月の売上、食材費、人件費、家賃や光熱費などの固定費を、一枚にまとめてみることです。

その数字を見て、「忙しさの割に利益が少ない」「この曜日は人件費が重い」「このメニューは売れているが原価も高い」と気づければ、次の判断がしやすくなります。

この「数字で確かめる」という姿勢は、料理や原価だけの話ではありません。情報発信も同じです。ホームページやGoogleマップを整えても、アクセス数や問い合わせ数を見ないままでは、効果があったかどうかを勘で判断していることになります。発信した結果を数字で振り返れば、どこを直せばよいかが見えてきます。

数字の整理や、情報発信の効果測定まで手が回らない場合は、外部のパートナーに相談するという選択肢もあります。勘と経験は、現場を知る店主にしかない大切な力です。その力に数字を足すことで、店を続けるための判断はもっと確かなものになります。まずは売上だけでなく、利益まで見える飲食店経営の数字管理から始めてみましょう。

石崎 一之進
この記事を書いた人
石崎 一之進(中小企業診断士)

経営コンサルタントとして中小企業のAI活用、IT導入、マーケティングの支援をしています。数々の事業者を支援する中で気づいたこと、他の飲食店の方に知ってほしいことを書いています。

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